雪風

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北海道の地震による停電は、人災?

「停電を人災と呼ぶ大新聞の非論理性」の要約
 停電を人災と呼ぶ大新聞の非論理性 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス]より

  1. 北海道で発生した停電に関し、朝日新聞毎日新聞の主張を簡単に言えば、「停電を招いたのは、発電所を分散配置しなかったから。コストがかかってもよいから、発電所を分散配置しなかった北電の責任。
  2. 生活・産業に必須な発電のコストを考えずに、万が一に備えて分散配置することはあり得ない。維持管理費等の経済性を考えれば、一箇所に大規模な発電所を建設するのは当たり前。これらを考慮せずに、北電の責任という朝日、毎日の主張はかなり一方的すぎる
  3. 小規模火力をあちこちに建設したならば、北海道の電気代は2~3割増加する
  4. 豪州は、石炭を主たる燃料としていた。地球温暖化への対処で、天然ガス再生可能エネルギーに電源を分散したが豪州全体で過去10年間に電気料金が平均7割増加した
  5. 南オーストラリア州では、風力発電が3割になったが、電気料金が世界一高くなり、風力発電が止まった時には停電が発生するようになった。分散しても停電を完全に避けるのは難しい。
  6. 電源の分散というのは簡単だが、それは費用との引き換えの話
  7. 台風21号により関西地区で停電事故が発生し、復旧に時間がかかった。朝日も毎日もこれは天災による停電と理解しているらしい。台風による停電も設備を地下に埋設すれば避けることが可能なので、人災とも言えるが、朝日も毎日も主張しない。(※)
  8. 地震による停電を、北電が一部の地域に限定できず全道に広がることを防げなかった理由については調査が必要だが、大型設備を建設したのを人災というのは、言いがかりに近い

※電柱倒壊による停電を指していると思われる

関連記事:朝日新聞鮫島氏、「北海道の電力供給体制が脆弱なのは原発に固執しているから」 実際は石狩湾新港に火力発電所を建設中 - 雪風

 

所見
 記事内でおいて、朝日新聞毎日新聞を批判していましたので、まず両方を読んでみました(両方共会員しか読めません。朝日新聞は無料会員として登録すれば、全文読めます。毎日新聞は、お金を払わないと読めません。)。

 まず、朝日新聞の記事内容ですが、北海道電力の責任の追求や脱原発ありきの主張をしているようには感じませんでした。識者の発言として、「ブラックアウトを防ぐ役目が電力会社にはある」と紹介したり、停電後の北電の情報発信等の対応の不味さを指摘していますが、論調として、北電の責任を追求するものではありませんでした。

 また、朝日新聞は、今回の北海道の地震によるブラックアウトをうけて、経済性を重視するあまり、大規模な発電所に頼る危険性を指摘しています。そして、小規模な分散配置の必要性の提言を行っている印象です。北海道電力が建設中の石狩湾新港発電所や本州から電力の融通を受けるための北本連系線の容量の増強工事にも触れており、北海道電力も電力の安定供給を怠っていたわけではないことが記事から読み取れました。朝日新聞の記事は、北海道地震によるブラックアウトに対する問題提起という印象を感じました

 次に毎日新聞ですが、こちらは、タイトルで「原発依存が招いた人災」としており、脱原発の考えを持つ記者の目線を記事にしたものでした。当然ですが、毎日新聞の記事は、朝日新聞の記事に比べ、大きく客観性に欠けています。再生可能エネルギーによる発電を推進せずに原子力発電を建設した北海道電力を批判しています。また、原発にのめり込んだ結果、石狩湾新港発電所の着工開始、本州から電力の融通を受けるための北本連系線の容量の増強工事の開始が遅れたことを指摘し、それを理由に設備投資を怠っていたとして、北海道電力を非難しています。毎日新聞の記事は、原発をやめずに、電源の多様化や発電所の分散をしなかった北海道電力の責任を主張しているように感じます

 朝日・毎日の記事に対して、ジャパンインデプスの記事では、小規模な火力発電所を分散配置すれば、北海道の電力料金は、2~3割増え、さらに再生可能エネルギーを導入すれば、さらに電力料金が跳ね上がり、容易にできるものではないと訴えています。さらに、風力発電が普及した地域では、停電も発生しており、難しい面があることも指摘しています。これらを踏まえずに人災というのは、言いがかりに近いとも言ってます。

 個人的に、やはり、今回の地震による停電を人災をいうのは無理があると思います。北海道電力は、安定供給とコストの兼ね合いで発電所の適正規模、適正配置をすすめていたはずです。今回、運悪く、原子力発電が稼働できない状態で、主力の火力発電所が被災してしまったので、人災と言ってしまうのは酷かと思います毎日新聞の記者は、原発を推進し、電源の多様化や発電所の分散を進めなかったから、人災と主張しているように思えますが、原発をやめたら、原発の穴埋めをどのように考えるのでしょうか?原発のかわりに安定電源となる火力発電を増やすと、温室効果ガスの排出が増えることになります。だから、太陽光発電や風力といった再生可能エネルギーに推進を主張するようになると思いますが、先程のジャパンインデプスの記事にあったように、風力発電の比率が高いと停電が起こるようになると思います。再生可能エネルギーを普及させたことによって停電が起きたら、これも人災とするのでしょうか?

 今回の地震による停電を受けて、原因を調査することは重要かと思います。その上で、電源の多様化や発電所の分散が検討されるかもしれません。その場合であっても、災害等による停電のリスク、安定的な燃料の輸入、経済コスト等をバランスよく検討し、今後の対策を進めていくと思われます。